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『ピアノの森』リアルな親子より深い愛情 カイの才能を伸ばす力とは?

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『ピアノの森』

 

一色まことさん原作の音楽を題材にした漫画。わたしの大好きな漫画のひとつです。映画にもなりました。

その『ピアノの森』現在、Eテレ日曜の午後7時から再放送中です。

 

私は随分前に漫画から入ったのでアニメはどうかな~?と思ったのですが、なかなか良いですね。

妻なんかは私の影響で原作読みたいと言い出したので、一度手放した漫画を改めて全巻買い直ししました。

 

そして面白いのは前回は独身時代に読んだ『ピアノの森』が結婚後に読むと違った感想をもったこと。

 

それが阿字野壮介一ノ瀬カイの関係です。

今回はそこを取り上げてみます。

 

阿字野壮介のポリシーとは?

交通事故で恋人とピアニスト人生を失った天才ピアニストの阿字野壮介。

事故から10数年経ったある日、小学校の音楽の先生として生計をたてていた阿字野は同じく天才的才能をもった少年カイに出会います。

そしてカイの才能を開花させるために阿字野はあらゆる手を尽くすのです。

 

まあ、設定はよくあるパターンではあるのですが、独身時代はその設定に何の違和感も持っていませんでした。

それが結婚後、自分の子供が出来てみると、阿字野とカイの関係性に興味が湧きました。

 

『森の端』という治安最悪の環境で生まれ育ったカイ。

娼婦の母親レイちゃんから愛を受け育ちますが、けっしてピアニストになるような環境ではありません。

ただカイは森に捨てられた(かつて阿字野が弾いていた)ピアノによって、その天才的な才能を育んでいきました。

 

そして落雷による火事でピアノが消失、ピアノを引き継ぎ自分がカイの才能を開花させる運命なんだと感じる阿字野。

まず阿字野のポリシーとして、すごいのはカイを自分のコピーとして育てないこと。

 

出会った当初から阿字野はカイに自分の音でピアノを弾けと言います。

言ってみれば一人の人間として認めている証拠です。

 

ある分野で実績を残した、もしくは未練を残した人間は自分が現役を退くと自分のコピーを作りがちです。

そのコピーが自分の意思を持つことを嫌います。そう。それは自分のエゴです。

自分が果たせなかった夢を息子や娘に託す、そして今一度(自分のコピーとして)世の中で名声を獲る!という欲求。

それが阿字野にはないんです。

 

いやもしかしたら・・あったのかもしれません。

あの時までは。

 

カイはピアノを失ってから落ち込んでいましたが、路上でガラスのピアノを弾いて気づきます。

『ピアノは俺の生命なんだ!』と。

 

いっぽう阿字野はカイの母親のレイちゃんから頼まれ、カイを森の端から離れさせ世界へ飛び出させようと画策します。

がカイは言うのです。

 

『俺はどこにも行かない!』

『外国に留学する必要もない!』

『俺の先生はここにいるじゃないか!! 俺にピアノを教えてください!阿字野先生』と。

 

それから阿字野はカイの※後見人になり勉強でも進学校へ通わせ、同時にピアノを教えるのです。

つまり実質の親同然となるのです。

 

漫画の中で対比して描かれているカイのライバルである雨宮修平とその父親、雨宮洋一郎。

この姿は現代日本の親子の姿を表しているなーと感じます。

恵まれた環境であるのに、自分に自信が持てない修平。

 

雨宮洋一郎は『癒やしのピアニスト』と呼ばれているのに、こと阿字野壮介に関しては別です。

かつてどうしても勝てない相手だった阿字野壮介。弟子として現れたカイに対して息子の修平を使って代理戦争をやらかしてしまいますからねー。

 

洋一郎自身は意識してやったわけではないのですが、結果的に修平を苦しめてしまうのは皮肉です。

 

 

阿字野とカイの絶妙な距離感

 

カイの親同然の阿字野ですが、その距離感は絶妙です。

プライベートに関してはほぼ放置プレイ。カイの自主性に任せっきりです。

 

それはカイを信頼しているからにほかなりません。

それでも、漫画の中では詳しい描写は出てきませんが、ピアノを弾くためのあらゆる環境を整える手助けをしたのは阿字野に間違いありません。

なんてったって通常、ピアニストになるために要する費用は数千万だと言われていますからね。

 

ただし生活費なんかはカイ自身が稼いでいます。

カイ自身が望んだことだとは思いますが、阿字野もそれを受け入れているのです。

 

カイは阿字野をどう思っているのか

 

一方のカイは阿字野をどう思っているのか?

ピアノの先生以上のものであるのは間違いありません。

阿字野はものすごい才能を持ちながら、ある日突然にすべてを奪われてしまう。

 

阿字野とカイの2人はジャン=ジャック・セローのピアノリサイタルに行きます。

そのとき、阿字野の指が無意識に動いているのを見てカイはいたたまれない気持ちになりました。

(これはネタバレになりますが)これをきっかけにカイは阿字野の手を治療する計画を練り始めるのです。

 

漫画の中ではカイは阿字野のことを『阿字野』とか『先生』と読んでいます。

でも言葉に出していない気持ちのときも『阿字野』と表現しています。

でも僕にはこの『阿字野』という呼び方が感覚として『父さん』に近いものに思えてしょうがありません。

あらゆる場面で阿字野とカイの思い出が出てきますが、2人はいろんなところに一緒に出かけたり、体験したりしているのです。

そして阿字野のためにショパン・コンクール優勝を目指すのです。

それが手の権威のドクターが阿字野を手術するための条件としてだしたものだったから!!

 

そしてジャンのこの言葉で確信しました。

『男の子は父親を超えて初めて一人前になる・・』

『おまえ(阿字野)はカイの超えなきゃならない大きな壁だそうだよ!』

 

『ピアノの森』スピンオフ編も読んでみたい

ショパン・コンクールで見事優勝したカイ。

同時にそれは阿字野の復活のスタートでもありました。

私はカイの阿字野に対しての感情は『父親』と表現しましたが、なんかちょっと違うかも。

なんだろなー?父親以上のものなんだよなー。

近い言葉だと『同志』かなー?これもちょっと違う気がする。

 

それはそうとしてこの『ピアノの森』の続編、読んでみたいなー。

なんといっても阿字野とカイの母親、レイちゃんとの関係もヒジョーに気になる。

年の差カップルだけど、数年後にはカイの弟か妹がいたりして!

 

その他にも雨宮修平や丸山誉子、パン・ウェイなんかのスピンオフ作品なんかもぜひ読んでみたいな!

 

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