今更という感満載ですが、映画『万引き家族』を見ました。
カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞して話題となりましたが、これまでの経験で外国の賞を獲った映画が面白いとは限りません。
予告編以外はまったくの予備知識無しで観たのですが・・・面白かった!!!
いや、正確には面白かったというより、切なさがいつまでも心のどこかに引っかかるような作品でした。
登場人物の「りんちゃん」が自分の娘と同じくらいの歳だったのも感情移入した理由だったかもしれません・・・
『万引き家族』の感想
見ていない人にはネタばれとなりますが、万引き家族といっても別に家族全員チーム組んで万引行為をするわけではありません。
(予告編ではさも家族全員が徒党を組んで万引行為をするような感じに仕上がっていますが・・・)
名前も柴田家となっていますが、実は全員が血がつながっていないエセ家族。
万引は主に父親役の治(リリー・フランキー)と息子役の祥太(城桧史)が行っています。
しかも興味深いことに万引き行為は実は必ずしも必要に迫られてやっているわけでもない。
その証拠に万引きした帰り道に治と祥太は一つ90円のコロッケを5つ買って帰るシーンがでてきます。
悲しいことですが、治にとって、万引き行為や車上荒らしはプライドを持って祥太に教えてやれる唯一のことなのです。
父親の威厳を子供に示すことが出来る唯一のことなのです。
ただ、その行為も賢い祥太には段々と通用しなくなってきている。
祥太は万引や車上荒らしが犯罪であることを認識し始めています。
この家族をみていると血の繋がりとは何なのかなーと感じてしまいます。
父親、母親から虐待をうけている「りん」(役では本名がじゅり)も徐々に家族に慣れてなじんでいきます。
実の家族のように海で一緒に遊ぶようになります。
安藤サクラさんの演技が評判通りすごかった!
映画を観終わって、ググって知ったのですが、安藤サクラさんの泣くシーンの演技が話題になっていたんですね。
そんな予備知識を知らなくても彼女の演技は素晴らしかったです。
カンヌ映画祭の審査委員長、ハリウッド女優のケイト・ブランシェットに、『彼女の泣くシーンを真似するかも・・』とさえ言わしめました。
安藤サクラさんといえば、私が初めて注目したのは『百円の恋』。
ボソボソとセリフを喋る彼女の演技は良く言えば大げさでない自然な演技、
悪く言えば聞きとりにくいです。笑
それでも彼女の自然体な演技にストーリーに引き込まれていくんですよね。
安藤サクラさんは少しやさぐれた役をやらせると天下一品ですね!
だからNHKの朝ドラでヒロインやってたときは『こんなの安藤サクラじゃねぇ』と思わずつぶやいちゃいました。
で話を戻すと、『万引き家族』の『信代』として彼女の演技はますます磨きがかかっていて、件の泣くシーンではこちらもグッと来てしまいました。
『2人の子はあなたのこと、なんて呼んでたの?』という捜査官の問いに、
『・・・なんだろうね。・・・・・・なんだろうね?』と手で髪を何度もかき上げながら泣くシーン。
捜査官のただ善なる理屈を並べたてた取り調べのシーンでは、彼らに怒りさえ湧いてきました。
劇中、確かに子どもたちは信代(安藤サクラ)のことを『ママ』とか『お母さん』とか代名詞で呼んでいません。
彼女のことをどう思っているのか、そういったシーンさえ出てきません。
でもね、信頼をしている様子は伺えるのです。
『僕らを虐待したり、見捨てたりしない!』という最低限の信頼を。
万引き家族のラストシーンとは?
本当の家族でない柴田家は、祥太の万引がバレることで崩壊を始めます。
それはりんちゃんに万引をさせないためにやったことでした。
そしてそこから、祖母・初枝(樹木希林)を家の床下に埋めていたことが発覚。(年金の不正受給をするため、もしくは仮の家族であったことを隠すため)
死体遺棄容疑で留置行きとなった信代、一人暮らしなった治、それぞれの家に戻されたであろう祥太とりん。そして姉役の亜紀(松岡茉優))
そして問題のラストシーン。
家に戻されたりんちゃんが以前のようにアパートの踊り場で遊んでいる。
そして何気なく遠くに何かを見つけて呟く『・・・・。』
これがラストシーンです。
りんちゃんは遠くに何を見つけたのでしょうか・・・・。